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短い時間でも会う男性心理、三十分で来る人と、会わない人の差はどこにあったか

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今日は三十分しか空いてないけど、駅前で少し会えないか。そう連絡が来る。

言われた側は、たいてい戸惑う。三十分のために往復一時間かけるのは、割に合わない気がする。無理しなくていいよ、と返してしまう人が多い。

けれど本人たちに聞くと、無理をしている感覚はないという。むしろ、会わないほうがきついらしい。

目次

三十分のために、往復一時間かけてきた

品川駅の構内、立ち飲みができるカフェで話を聞いた。人の流れが絶えず、話が何度も止まる。あゆみさん、二十七歳、会社員。

付き合い始めて二ヶ月くらいの時期でした。彼、残業がすごく多い仕事で、休日出勤もあって。

平日の夜に連絡が来たんです。今日三十分しか空いてないんだけど、駅前で少し会えない、って。

私、最初に、短い時間なら無理しなくていいよ、って返しました。気を遣ったつもりで。

そしたら、顔を見たいだけでもいい、って。

何も起きなかった三十分が、いちばん残っている

来てくれて、駅前を並んで歩いて、コンビニで飲み物買って、それで終わりです。話した内容も覚えてない。仕事どうだったとか、その程度。

でも、あの三十分がいちばん記憶に残ってるんですよ。ちゃんとしたデートも何回もしてるのに。

彼女は少し考えてから続けた。

たぶん、あれって割に合わないじゃないですか。往復一時間かけて三十分。損してるんですよ、どう考えても。損してでも来た、という事実だけが残る。

あとから知ったんですけど、あの日、彼は帰ってからまた仕事してたらしいです。それを言わなかったのも含めて、ああ、と思いました。

誘う側は、何を回収しているのか

けんたさん、三十二歳、エンジニア。誘っていた側の説明は、思ったより実務的だった。

会いたいから会う、で終わりなんですけど、もう少し言うと、彼女の顔を見ると気持ちが落ち着くんです。それが理由の九割です。

仕事が立て込んでる時期って、頭の中がぐちゃぐちゃなんですよ。それが、十分でも顔を見ると、ちょっと整理される。効率で考えると意味不明なんですけど、実際そうなるので。

無理しなくていいよ、と言われたときの返しを、彼はよく覚えていた。

無理してるんじゃなくて、会いたいのが勝ってるだけ、って言いました。あれは本当です。我慢して会いに行ってるんじゃなくて、会わないでいるほうがしんどいから行ってる。

連絡だけでは、関係が薄くなっていく感覚がある

長いデートが月一回あるのと、短いのが週二回あるのとだと、俺は後者のほうが関係が保てる感じがします。

理由はうまく説明できないんですけど、間が空くと、相手が遠くなるんですよ。文字だけだと、なんか、輪郭が薄くなる感じがして。会うと戻る。

だから短時間で会うのは、進めるためというより、減らないようにするための行動なんだと思います。

十分だけ、と言ってくる人の内側

たくみさん、三十四歳、営業職。彼はもっと切実だった。

本命の人に対しては、どんなに忙しくても十分でも会おうとしてました。会わない日が続くと、不安になるので。

不安の中身を聞くと、彼は少し言いにくそうにした。

メッセージだけだと、相手の状態がわからないんですよ。文字は、いくらでも取り繕えるので。声を聞いて、顔を見ると、ああ大丈夫だな、ってわかる。それを定期的に確認したかった。

安心のために、相手の時間を使っていた

これ、後から反省した部分でもあるんです。

俺が十分会いに行くのは、俺が安心したいからでもあったんですよ。相手にとってはどうだったのか、あんまり考えてなかった。彼女だって支度するし、その十分のために時間を空けてるわけで。

彼女が、短い時間でも来てくれてありがとう、って言ってくれたときは嬉しかったです。ただ、あれを毎回言わせてたのも、たぶん負担だったと思う。

彼はここで言い方を変えた。

短い時間でも会うのは、気持ちがあるからです。それは間違いない。でも、気持ちがあれば何をしてもいいわけじゃなくて。相手の予定を細かく削ってる自覚は、持ってたほうがよかったです。

話すことがないのに、駅まで一緒に歩いた

まゆさんが話してくれたのは、二十五歳、大学生だった頃のこと。付き合う前の話だ。

気になってた先輩から、今日の帰り道、少しだけ時間ある、って連絡が来たんです。話したいことがあるわけじゃないんだけど、って但し書きつきで。

私、脈ありだと思って、めちゃくちゃ緊張して行きました。何か言われるのかと思って。

実際は、本当に何もなかったです。駅まで十五分くらい一緒に歩いて、じゃあまた、で終わり。

用件のない誘いのほうが、意味が濃い

拍子抜けしたんですけど、後から考えたら、あれがいちばんわかりやすいサインだったんですよね。

用事があるから会う、って普通のことじゃないですか。用事がないのに会いたいって、それ以外に理由がないってことなので。

先輩、後から言ってました。短時間でも顔を合わせるだけで距離が縮まる気がした、って。

長いデートを組むのって、その人にとってはハードルが高かったんだと思います。場所を決めて、時間を決めて、何をするか考えて。そういうのが苦手な人でも、帰り道十五分ならできる。あの人なりの精一杯の誘い方だったんだな、と今は思います。

会えない時期に、それでも会おうとするかどうか

ゆいさん、三十歳、看護師。彼女の場合は、彼の出張が多く、遠距離に近い関係だった。

会える時間が本当に限られてたんです。それでも、移動の合間に一時間だけ会えないか、って連絡が来る。

新幹線の時間の間に一時間、みたいなことが何度もありました。駅の近くのファミレスで一時間話して、そのまま彼は乗り場に向かう。

あるとき彼が言ったんです。短い時間でも会うと、また頑張れる気がする、って。

会う頻度より、優先順位のほうが見える

私、それを聞いて、この人にとって会うことは充電なんだな、と思いました。

考えてみると、忙しい人ほど時間の使い方がはっきり出るんですよ。時間がない中で何に使うかって、その人の順位そのものなので。

暇な人が三時間くれるより、忙しい人が三十分くれるほうが、私は重く感じます。同じ三十分でも、どこから削ってきたかが違うので。

疑っていた側が、納得した瞬間

りなさん、二十八歳、事務職。彼女は最初、この行動を信じていなかった。

短い時間でも会いたい、って言われても、正直、半信半疑だったんです。本当に忙しいなら会わなくていいのに、って。

というか、疑ってました。都合よく短時間で済ませようとしてるんじゃないか、と。時間をかけたくないだけなんじゃないか、と。

回数が、疑いを消した

考えが変わったのは、回数を数えてからです。

三ヶ月で、たぶん二十回くらい会ってました。一回あたりは短いんですけど、全部合わせるとけっこうな時間で。しかも、こっちから誘ったことは数回しかない。ほぼ毎回向こうからでした。

一回だけなら疑えるんですよ。でも二十回続くと、疑いようがない。

ある日、彼が正直に言ったんです。長い時間取れない自分が情けないけど、会わないよりはマシだと思ってる、って。

あの、情けないけど、の部分が本当だったんだと思います。取り繕ってなかったので。

短い時間の誘いが、そうでない場合

六人の話を並べていると、この行動が全部気持ちの表れかというと、そうとも言い切れない部分が見えてきた。

分かれ目は、誰の都合に合わせているかだ。あゆみさんの彼は往復一時間かけて来た。ゆいさんの彼は乗り換えの合間を使った。どちらも、来る側が移動と手間を負担している。

そうでない形もある。相手を自分の生活圏に呼びつけて、十分で済ませる。夜遅い時間にだけ、近くにいるから、と連絡が来る。同じ短時間でも、負担がどちらに寄っているかで意味が変わる。

たくみさんの言い方を借りるなら、削ってきた場所が見えるかどうか、だと思う。何かを削って来ている人は、その削った跡が態度に出る。急いでいる、疲れている、それでも来ている。跡が見えない短時間は、単に空いた枠に入れられているだけかもしれない。

りなさんは今、その相手と続いている。短い時間で会う形は、あまり変わっていないという。

たまに思うんですよ。私、あの人のスケジュールの隙間に住んでるみたいだな、って。悪い意味じゃなくて。隙間に入れてもらえるのって、実はけっこう上のほうにいるってことなので。

あゆみさんは、あの三十分の日のことを彼に言っていない。覚えてるか聞いたこともないです、と彼女は言った。たぶん向こうは忘れてます。忘れてるくらいのことが、こっちに残ってるほうが、なんかいいので。

品川の構内は、話している間ずっと人が流れていた。彼女は電車の時間を気にして、一度だけ時計を見た。

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