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何が悪いかわからないまま、過ごしてたモテない男たちの特徴の核心

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「モテない理由、教えてください」と女性に頼んだことがある男性は、案外多い。

で、たいてい「そんなことないよ」と言われて終わる。あるいは「清潔感かな」とか「もう少し積極的になれば」とか、当たり障りのない言葉をもらって、何も変わらない。

本当のことは、言われない。言いにくいから。


目次

新橋の地下、煙草の匂いが残る店で

新橋駅の烏森口を出て、細い路地を2分ほど進んだ先に、その小さな居酒屋はある。地下に降りる階段の途中から、揚げ物と煙草が混ざった匂いがしてくる。換気が弱い。でも不思議と居心地が悪くない。

菊池さん(仮名・34歳・地方公務員)は、カウンターの端で焼酎を飲んでいた。待ち合わせより7分早く来ていた。こちらが席に着くと「あ、どうも」と言って、グラスを少し持ち上げた。

「モテない話、ですよね」

確認してから、口の端だけで笑った。

「32歳まで、彼女いなかったんで。ネタにできるくらいには、慣れました」

慣れました、と言った声が、少しだけ乾いていた。


「モテない」の本当の意味——外見でも収入でもなかった

菊池さんは、身長174センチ、顔立ちは悪くない。収入は地方公務員として安定していて、趣味も読書・映画と、会話の糸口には困らないはずだった。

「だから余計、わからなかったんですよ。外見がひどいわけでも、清潔感がないわけでもない。仕事も安定してる。でも、好きな子に告白しても断られる。マッチングアプリで会えても2回目がない。それが10年続いた」

「で、32歳のとき、当時仲良かった女性の友達に半分酔った勢いで、全部ぶつけたんですよ。俺、何がダメなの、って。そしたら彼女、少し黙ってから言ったんです。『菊池くんって、自分の話しかしてないときと、相手の話を聞くふりして評価してるときしかない気がする』って」

グラスを置いた。

「正直、その瞬間は意味がわからなかった。でも家に帰って、ここ10年の会話を全部思い出したら——当てはまりすぎて、眠れなかった。朝4時まで、天井を見てた」

モテない男性の特徴として語られがちなのは、外見・清潔感・コミュニケーション力といった表面的なものだ。でも取材を通じて浮かんできたのは、もっと奥にある、本人が気づきにくい何かだった。


「自己開示の歪み」モテない男が無意識にやっている、致命的なズレ

この取材で見えてきた核心を、ひとつのフレームで整理したい。

モテない男性に共通していたのは、外見でも話術でもなく自己開示のやり方が歪んでいる、という点だった。

自己開示には、二つの方向がある。ひとつは「自分を良く見せるための開示」。もうひとつは「自分の本音や弱さを、適切なタイミングで見せる開示」。

モテない男性の多くは、前者に偏りすぎている。会話の中で、自分の知識・経験・価値観を「提示」することに終始し、相手から何かを「受け取る」回路が機能していない。あるいは逆に、自己開示を完全に閉じて、当たり障りのない会話だけを続ける。

どちらのパターンも、相手に「この人と一緒にいると、自分が存在していない感じがする」という感覚を与える。

菊池さんが友人に言われた「自分の話しかしてないときと、相手を評価してるときしかない」は、この歪みを正確に言い当てていた。

「今思うと、俺は会話を”自分を証明する場”として使ってたんですよ。映画の話をするのも、本の話をするのも、全部、俺はこういう人間だ、という証明のため。相手がそれをどう受け取ってるか、考えたことがなかった」


当事者が語る、自分でも気づいていなかった特徴

次に話を聞いた渡部さん(仮名・29歳・ITエンジニア)は、都内のシェアオフィス近くのカフェで待っていた。ノートパソコンを開いたまま、閉じるタイミングを少し迷ってから、パタンと閉じた。

「モテない自覚は、ずっとあった。でも原因の見当がつかなくて」

渡部さんは大学時代から5年間、一度も交際経験がない。マッチングアプリは3種類同時に使い、月に6、7人と会っていた時期もある。それでも、2回目のデートに繋がったのは5人に1人以下だった。

「ある日、アプリで知り合った子に、デートの感想を正直に書いてほしいってお願いしたんですよ。脈なしだってわかってたから、ダメ元で。そしたら返ってきたメッセージが——『渡部さんといると、なんか試験受けてる感じがした』って」

試験。

「最初、意味がわからなかった。でも、その子が続けて書いてくれたんです。『質問が多くて、ちゃんと答えなきゃって思ってしまった。でも渡部さん自身が何を感じてるか、全然わからなかった』って」

渡部さんは、デートで徹底的に「相手のことを聞く」スタイルを取っていた。それは「聞き上手になれ」というアドバイスを真面目に実践した結果だった。

「聞くことが正解だと思ってた。でもやりすぎると、尋問になる。相手は答えを求められ続けて、こっちは何も見せない。それって安全な場所から一方的に相手を観察してるだけで、関係でも何でもなかった」


女性側が語る「なぜあの人は無理だったか」本音の告白

女性側の声も聞いた。

都内在住の川島さん(仮名・31歳・PR会社勤務)は、モテない男性と関わった経験を複数持つ。

「嫌いになるわけじゃないんですよ、こちらも。悪い人じゃないし、誠実だし。でも——なんかしんどいんです、一緒にいると」

そのしんどさの正体を、川島さんはこう言語化した。

「相手が、私に何かを期待しすぎてる感じがする。私が笑えば過剰に喜ぶし、少し表情が暗いと『何かしましたか』って聞いてくる。それが続くと、私が相手の感情の管理者みたいになってきて疲れる。すごく疲れる」

「あと、これは言いにくいんですけど自分に自信がない人って、わかるんですよ。言葉じゃなくて、なんか全体の空気で。その自信のなさが、私への過剰な期待になって出てくる。この人は私に認められたいんだな、って感じると恋愛対象じゃなくて、なんか、応援してあげたい感じになってしまう」

もう一人、話を聞かせてくれた長谷川さん(仮名・28歳・看護師)は、さらに直接的だった。

「好意を持ってくれてるのはわかる。でも、その好意の重さが最初から最大値なんですよ。会って2回目なのに、毎日LINEが来る。既読してから5分以内に返信しないと『何かありましたか』って来る。それが続いたとき、正直に言うと逃げたくなった」

「重い、って言うと悪口みたいだけど本当は、軽くしてほしいわけじゃなくて。ただ、その人が私以外のもので満たされてる部分を、見せてほしかった。この人は私がいなくてもちゃんと生きてる、って思えたら、もう少し近づけた気がする」


モテない状態が長期化すると何が起きるか

福岡在住の三浦さん(仮名・37歳・自営業)は、35歳まで交際経験がなかった。

Zoomで繋ぐと、背景に植物が並んでいた。話し始めるまで少し間があって、「どこから話せばいいですかね」と確認してから、ゆっくり始めた。

「20代の後半から、恋愛することをほぼ諦めてたんですよ。諦めた、というより諦めないと、生きていけなかった。好きな人に告白して断られるたびに、自分の何かが削れていく感じがして。削れすぎると動けなくなるから、そもそも好きになることをやめようとした」

「やめようとした、って言い方が正確でやめられなかった。好きになることはやめられない。でも行動はしない。好きなまま、ただ眺めて、勝手に諦める。それを繰り返してた。30歳から35歳の5年間」

「今振り返ると、あの5年間で一番失ったのは人を好きになることへの純粋さ、だと思う。好きになるたびに、どうせまた無理だ、という計算が先に来るようになった。その計算が顔に出てたんだと思う。近づく前から諦めてる人間の顔って、相手に伝わるんですよね、絶対」

35歳のとき、地元の友人の結婚式で知り合った女性と、初めて交際が始まった。

「その子に後から聞いたら、最初は全然タイプじゃなかったって言われた(苦笑)。でも話してるうちに、なんか素直な人だと思った、って。素直、って言葉、意外だったんですよ。自分では素直だと思ったことが一度もなかったから」

「後で気づいたんですけど、その結婚式の日、俺はもう諦めてたんですよ、恋愛を。だから計算しなかった。どうせ無理だという前提で話してたから、うまく見せようとしなかった。それが素直に見えたのかもしれない」


「変わった」男が語る、変わる前夜の話

菊池さんが彼女を作れたのは、33歳のときだった。友人に「自分の話しかしてない」と言われてから、1年後のことだ。

「何を変えたかというと1個だけ、意識したことがある。会話の中で、俺自身が何を感じてるかを、ちゃんと言うようにした。映画の話をするなら、この映画のここが好き、じゃなくて、この映画のこのシーンで泣いた、って。事実じゃなくて、感情を言う」

「それだけ。たったそれだけなんですけど——反応が変わった。話してた子が、初めて『そうなんだ、どんな気持ちで泣いたの?』って聞いてきて。そこから会話になった。それまでの俺の会話は、情報の交換で止まってたんだと思う。感情が入った瞬間に、初めて人間と話してる感じになった」

渡部さんは、今も模索中だと言った。試験官みたいだと言われてから、聞き方を変えた。質問の数を半分にして、代わりに自分の話を挟むようにした。

「うまくいってるかどうか、まだわからない。でもデートのあとに、なんか疲れた、という感覚がなくなった。それだけは確かです。疲れてたのは相手だけじゃなくて、俺自身もだったんだと思う」

三浦さんは今、2年目の交際が続いている。

「今の彼女に、過去のこと35歳まで誰ともつき合ったことがないこと、全部話しました。どんな顔をするか怖かったけど、聞き終わってから『教えてくれてありがとう』って言ってくれた。それだけで、長かった何かが、少しだけ終わった気がした」


新橋の地下居酒屋を出るとき、菊池さんがコートを羽織りながら言った言葉を最後に書いておく。

「モテない男の特徴って、よく記事に書いてあるじゃないですか。清潔感がないとか、ネガティブすぎるとか。でも俺が32年かけて気づいたのはそういう話じゃなかった。自分が、ちゃんと人の前に立ててなかった。鎧を着たまま、人に好かれようとしてた。それだけだった気がする」

路地に出ると、風が少し冷たかった。

菊池さんは「じゃあ」と言って、駅と逆方向に歩いていった。気づいていないのか、気づいていてそっちに用事があるのか、聞けなかった。

その後ろ姿が、角を曲がって消えるまで、なんとなく目で追っていた。

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この記事を書いた人

ノンフィクション・リアルドキュメント編集部
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