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マウントを取る女の心理を、やられた側とやっていた側の両方が語り尽くす

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褒められたはずなのに、なぜか傷ついている。

そういう経験が、ある。「すごいね、私には無理だわ」と言われたとき。「〇〇ちゃんって本当に天然だよね、かわいい」と笑われたとき。会話が終わった後に残るのは、温かさじゃなくて、どこか削られたような感覚ででも何が起きたのか、うまく言語化できない。

マウントを取る女、実際の現場で起きていることは、その言葉が示すよりずっと繊細で、見えにくく、しかも当事者ですら気づいていないことが多い。

この記事は、マウントを取られ続けた経験を持つ女性3人と、自分自身がマウントを取っていたと気づいた女性1人への取材をもとにしている。加害と被害がこれほど曖昧に混ざり合うテーマは、久しぶりだった。


目次

西荻窪の夕方、窓際の席で

駅から歩いて4分。古本屋の並ぶ通りを抜けた先にある、小さなカフェ。窓際の席に、中谷さん(仮名・32歳・出版社勤務)はいた。ハーブティーを両手で包んで、窓の外をぼんやり見ていた。こちらが座ると、少し体を起こして「今日、正直に話せるか自信ないんですけど」と前置きした。

「5年間、ずっと仲良しだと思ってた友達がいて。でも去年、その子と距離を置いてから初めて——ああ、あの会話たちは何だったんだろうって、考えるようになって」

ハーブティーから湯気が立ち上った。

「何かひどいことをされたわけじゃない。でも5年間、じわじわ削られてた気がする。それが怖いんですよ。気づくのに5年かかった、ということが」


マウントを取る女が、実際に何をしているのか

中谷さんが語る、その友人のやり口は、一見するとどれも普通の会話に見える。

「私が新しい服を買ったって話をすると、必ず自分が最近買ったもっと高いブランドの話になる。仕事で褒められたって言うと、『いいな、私なんてこんなに大変で』って話が始まる。旅行の話をすれば、その国はもう行ったけどここがよかった、になる。全部、私の話が踏み台になってる感じがして」

「でもね、面と向かって怒れないんですよ。だって、その子は何も悪いことを言ってない。ただ自分の話をしてるだけ、とも取れる。だから5年間、ずっと気のせいかな、と思い続けた」

この「気のせいかな」と思わせること自体が、マウントの巧妙さだ。

露骨な自慢話や、直接的な見下しは、誰にでもわかる。でも実際のマウントは、もっと柔らかい形を取ることが多い。相手の話題を横取りする。さりげなく自分の優位性を匂わせる。褒め言葉に、ほんの少しの棘を混ぜる。どれも単体では「証拠」にならない。積み重なって初めて、じわじわと相手の自己肯定感を削っていく。


「比較の自動販売機」なぜ女性のマウントは見えにくく、深く刺さるのか

この取材を通じて浮かんできた視点を、ひとつ整理しておきたい。

マウントを取る行為は男女問わず起きるが、女性間のそれが特に見えにくい理由がある。女性同士の会話は、共感と情報共有を基盤にしていることが多い。だから、マウントが共感の言語でコーティングされると、受け取る側が攻撃と気づきにくい。

「わかる、私もそれ経験したよ——でも私の場合はね」という構造。これは表面上は共感だ。でも実際は、相手の経験を自分の経験の前置きとして消費している。

取材中、これを指して私は頭の中で「比較の自動販売機」と呼ぶようになった。何を投入しても、必ず比較が出てくる。喜びを入れても、悲しみを入れても、どんな話題でも、最終的に自分が上か相手が下かという結果に変換される機械。しかも外側は、親切と関心の顔をしている。

刺さるのは、その「親切の顔」のせいだ。傷ついても、文句を言えない。言ったら自分が被害妄想になる。その宙吊りが、長期間続く。


マウントを取られ続けた女性たちの証言

次に話を聞いた福田さん(仮名・35歳・フリーランスデザイナー)は、職場の先輩に4年間、じわじわと削られた経験を持つ。

待ち合わせた恵比寿のバーに来たとき、福田さんは少し緊張した顔をしていた。「こういう話、録音とかされないですよね」と最初に確認した。

「先輩は、仕事ができる人だった。実際に。だから余計、タチが悪かった。仕事の場面での圧力に、プライベートな指摘が混ざってくる。『福田さんってそういう服好きなんだね、個性的』って言いながら、自分はきれいめな服を着てる。個性的って褒め言葉に聞こえるけど、そのときの声のトーンと間があって——嫌味だって、後でじわじわわかる」

「一番きつかったのは、私が大きなプロジェクトを任されたとき。先輩が『よかったね、でもあのクライアント、難しいから気をつけてね』って言ってきて。心配してくれてるように聞こえる。でも実際に届いたのは、お前には難しいかもしれない、という言外のメッセージで」

「そういうのが4年間続いて、気づいたら私、新しい仕事を任されるたびに怖くなってた。自信がなくなってた。先輩に何か言われる前から、自分で自分を否定するようになってた。これが一番、後から気づいてぞっとした」


当事者告白「私がマウントを取っていた」

この取材で、最も予想外だったのが次の証言だった。

神戸在住の橋爪さん(仮名・38歳・会社員)は、自分自身がマウントを取り続けていたと気づいた経験を持つ。Zoomで繋ぐと、少し前のめりになって話し始めた。

「仲のいい友達に、去年突然言われたんですよ。『橋爪といると、なんかいつも負けてる気分になる』って。ショックで最初は意味がわからなかった。私、そんなことした覚えがないって思って」

「でも、その子が具体的に教えてくれて。私が仕事の話をするとき、毎回どれだけ忙しいか、どれだけ評価されたかの話が入ってくる。その子が悩みを相談してきたとき、気づいたら私の似た経験の話になってる。旅行の写真を見せてきたとき、そこ行ったよ、って先に言ってしまう。全部、その子から指摘されて初めて思い出した」

橋爪さんは、少し沈黙してから続けた。

「なんで私、そういうことをしてたんだろう、って考えた。自慢したかったわけじゃない、そこだけは自分でもわかってた。でも掘り下げていくとなんか、自分がちゃんとした人間だって、常に証明し続けないと怖かったんだと思う。仕事も、経験も、選んできた人生も、全部、誰かに認められないと不安で。友達との会話が、無意識に承認の場になってた」

「マウントって、強さじゃなくて弱さから来てる。それを自分で気づいたとき、恥ずかしくて泣いた。ひとりで、30分くらい」


職場・友人・パートナーの母親——関係別の実態

もう一人、話を聞いた石井さん(仮名・41歳・主婦)は、義母からのマウントに10年以上向き合ってきた。

「義母の場合、悪気が本当にないと思うんですよ。それが一番しんどくて。『昔は働きながら3人育てたのよ』って言葉、何十回聞いたかわからない。私が疲れたと言うたびに出てくる。比べてる意識はゼロだと思う。でも届くのは、お前は軟弱だ、というメッセージで」

「夫に相談したら、『悪気ないんだから』って言われた。わかってる。わかってるけど、悪気がなくても削られる。むしろ悪気がないほうが、反論できない分、消耗する」

「10年かけてわかったのは義母を変えることはできない、ということ。変えようとするたびに、私が疲弊するだけだった。だから今は、右から左に流す練習をしてる。完全にはできないけど、昔よりは。それが私の今の精一杯で」

関係ごとにマウントの形が変わることが、取材を通じて浮かんできた。職場では能力や実績、友人間では恋愛・結婚・子ども、義母・姑との関係では生き方や価値観どの領域でも、比較の矢は相手の自己評価のど真ん中に向かって飛んでくる。


マウントを取る女との付き合い方—距離の取り方と、その限界

中谷さんは、5年間仲良しだった友人と距離を置いた後、どうなったかを話してくれた。

「距離を置いた最初の3ヶ月、罪悪感がひどかった。あの子、傷ついてるんじゃないかって。でも同時に、ものすごく楽になってた。日曜の夜に翌日会う憂鬱がなくなって、LINEが来ない日の静けさが心地よくてその落差で、どれだけ消耗してたか、初めてわかった」

「でも完全に縁を切れたかというと、そうでもなくて。共通の友達がいるから、どこかで会う。会ったとき、向こうは普通に話しかけてくる。私も普通に返す。でも5年前とは違って、今は少し距離を保ってる。それが、私には今できる限界」

福田さんは、職場の先輩が異動になって物理的な距離ができたことで、ようやく消耗が止まった。「環境が変わらない限り、自分ではどうにもできなかったと思う。それが悔しくもあるし、仕方なかったとも思う」と言った。

橋爪さんは、指摘してくれた友人にきちんと謝ったと言った。

「謝ったとき、友達が言ったのは『謝ってほしかったわけじゃなくて、ただわかってほしかっただけ』って。その言葉が今も刺さってる。私はずっと、誰かにわかってほしかっただけだったのかもしれない。それがあんな形で出てたことが、情けなくて」


西荻窪のカフェを出る前、中谷さんがカップを置きながらぽつりと言った。

「マウントを取る子って、嫌いになれないんですよね、不思議と。嫌いになれたら、ずっと楽なのに。あの子も、何かが怖くて、ああいう話し方をしてたんだと思うから。だからって付き合い続けられるかというと、それも無理で」

好きでも嫌いでもない。でも、近くにはいられない。

そういう人間関係が存在することを、この取材の前、私は少し甘く見ていた気がする。

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この記事を書いた人

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