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交際の意味を八人に聞いたら、全員が違う場面でその質問にぶつかっていた

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好きな気持ちはある。連絡も取っている。週末も会っている。それなのに、なぜ付き合っているのかがわからなくなる時期が来る。交際の意味を検索する人は、たぶんその状態の入口にいる。

目次

好きなのに、意味がわからなくなる

習慣になっているだけではないか

三十一歳のミナさんは、交際が一年を過ぎた頃にその疑問を持った。

「毎日連絡を取って、週末に会って、一緒にご飯を食べて。恋人らしいことは全部してたんです」

問題はなかった。

「なかったです。喧嘩もしてないし、不満もない」

それなのに。

「心のどこかで、これって習慣になってるだけなんじゃないかって」

好意はあった。

「ありました。それは間違いなくて。だから余計に混乱したんですよ。好きなのに意味がわからないって、どういうことなんだろうって」

どうしましたか。

「ある夜、本人に聞きました。私たち、何のために付き合ってるんだろうって」

そのときの空気は。

「重かったです。向こうも、え、って顔をして」

答えは。

「少し考えてから、一緒にいると安心するから、って」

それで納得しましたか。

「しました。というか、拍子抜けしました。もっと大きい理由を期待してたので」

拍子抜けしたのに納得した。

「したんですよ。交際の意味って、特別なイベントじゃなくて、日常の安心感の方にあるのかもしれないって、そのとき思って」

何もない時期にだけ、この疑問は来る

八人の証言で最初にわかったのは、この疑問が湧くタイミングだ。

危機のときには来ない。喧嘩の最中や、別れそうな局面では、意味を問う余裕がない。目の前の問題を処理することで手一杯になる。

疑問が湧くのは、何も起きていないときだ。関係が安定して、やることが決まって、次の展開が予測できるようになった頃。そこで初めて、これは何のための時間なのかという問いが出てくる。

ミナさんが言ったとおり、好意の有無とは関係がない。

曖昧な関係から、正式になったとき

二十八歳のサキさんは、逆方向から意味を掴んだ。

「長いこと、はっきりしない関係が続いてた人がいて」

どのくらい。

「一年半くらいです。会いたいときに会って、連絡も気軽で」

それが正式になった。

「なりました。それで、急に、あ、交際ってこういうことなんだって実感して」

何が変わりましたか。

「お互いの予定を優先するようになりました。前は、都合が合えば会うだったのが、会うために予定を空けるに変わって」

他には。

「将来の話が自然に出るようになりました。前は絶対にしなかったのに」

重く感じましたか。

「最初は重かったです。責任が増えた感じがして」

今は。

「同時に、この人と本気で向き合ってるっていう実感も生まれて。あれは前の関係にはなかったものです」

彼女はそこを、こう言い換えた。

「交際って、自由を手放すことだと思ってたんですよ。違いました。相手を自分の人生に正式に位置づけることでした」

優先順位という答え

三十四歳のケンジさんは、友人に聞かれて答えられなかった経験を話した。

「飲みの席で、交際って結局何? って聞かれて」

答えられなかった。

「即座には出なかったです。好きだから会う、寂しいから連絡する。それだけなら友達でもできるでしょ」

考えてみて、何が浮かびましたか。

「優先順位が変わることですね。それが一番しっくり来ました」

具体的には。

「他の予定より、その人を優先する。他の異性より、その人を大切にする」

つまり。

「特別扱いをする覚悟があるかどうかです。それが交際とそうじゃない関係の違いだと思いました」

その基準で見ると。

「見えるものがありますよ。優先されてないなら、たぶん交際は成立してないので」

温度差が、質問で露見した例

三十歳のユカさんの話は、この取材でいちばん重かった。

「交際を始めても、相手が本気になってくれない感じがあって」

どんな状態でしたか。

「優しいんです。それは間違いなくて。ただ、将来の話は避けるし、友人優先の時間が多くて」

どのくらいの期間。

「八ヶ月です。ずっと、本当に付き合ってる意味あるのかなって思ってました」

聞きましたか。

「思い切って聞きました。交際って、あなたにとってどういう意味? って」

答えは。

「まだよくわからない、って」

そのときは。

「頭が冷えました。怒りじゃなくて、なんか、すっと」

なぜですか。

「正直に答えてくれたんですよ。嘘をつかれたわけじゃない。ただ、あの一言で温度差がはっきりして」

その後は。

「三ヶ月くらいして別れました」

後悔していますか。

「聞いたことは後悔してないです。聞かなかったら、たぶんもっと長く同じ場所にいたので」

意味が共有できていない関係について。

「続かないと思います。片方だけが意味を考えてる状態って、けっこう消耗するので」

相手のダメな部分が見えたとき

三十六歳のトモコさんは、また別の入口から同じ疑問に到達している。

「相手のダメな部分が見えてきたときです。この人と付き合う意味ってあるのかなって」

最初は違ったんですね。

「最初は理想化してました。完全に。それが現実の生活を共有するうちに、不満が増えていって」

たとえば。

「細かい話ですけど、約束の時間にいつも十分遅れるとか。お金の使い方が雑とか」

別れる選択も。

「ありました。何回も考えました」

何が変わったんですか。

「ある日ふと思ったんです。交際の意味って、完璧な人を見つけることじゃなくて、不完全な相手とどう歩むかを学ぶことなのかもしれないって」

きれいにまとめすぎではないですか、と私は聞いた。彼女は少し笑った。

「そう思います? ただ、あのとき本当にそう感じたんですよ。実際、向き合ってみることにして」

結果は。

「今も続いてます。遅刻は直ってないですけど」

その過程で。

「交際が、単なる好き嫌いを超えたものだって気づきました。好きかどうかだけで判定してたら、たぶん別れてたので」

三十三歳のダイキさんは、喧嘩の最中に同じことを考えた。

「大きい喧嘩をして、もう別れようと思ったんです」

そこから。

「少し時間が経って、交際の意味って、うまくいくときだけ一緒にいることじゃないよなって考えて」

冷静ですね。

「いや、三日くらい何も手につかなかったです。冷静ではなかった」

結論は。

「嫌な部分も見て、それでも続けるかどうかを決めるのが交際なのかなって。それで、話し合って続けました」

その経験で。

「甘さだけじゃないんだなと。責任とか努力とか、そういうものも含むんだと実感しました」

年齢で、基準が入れ替わる

四十一歳のヒロシさんは、失恋後にしばらく交際から離れていた。

「三年くらい誰とも付き合わなかったです」

その後で。

「また誰かと付き合い始めたときに、以前とは違う感覚があって」

どう違いました。

「若い頃は、好きだから交際するっていう単純な理由でした。それだけで十分だった」

今は。

「この人となら、嫌なことも含めて向き合えるって思える相手を選ぶようになりました」

判断が変わった。

「変わりました。交際の意味が、楽しさとかときめきだけじゃなくて、人生を共有する覚悟に変わってた」

その基準だと、選べる相手は減りませんか。

「減ります。かなり」

それでも。

「それでもです。前の基準で選んで失敗してるので」

意味は共有されないと、機能しない

八人の答えを並べると、内容はばらばらだった。

安心できる居場所だと言った人。人生に正式に位置づけることだと言った人。優先順位だと言った人。不完全な相手と歩む練習だと言った人。人生を共有する覚悟だと言った人。

一致しないのは当然だと思う。ただ、続いている関係と終わった関係を分けているものは、意味の内容ではなかった。

ユカさんの相手は、まだよくわからないと答えた。ミナさんの相手は、安心するからと答えた。どちらも正直な回答だ。違ったのは、その答えが相手と共有できる形だったかどうかになる。

ミナさんに最後に聞いた。今も同じ相手と続いていますか。

「続いてます。あの会話から四年目です」

意味を問い直すことは。

「あります。年に一回くらい」

聞くんですか。

「聞かないです。自分の中で確認するだけで」

答えは変わりましたか。

「変わりました。今は、安心よりもう少し面倒な言葉になってて」

どんな。

彼女は少し考えた。

「うまく言えないんですけど、この人がいない状態を想像すると、生活の設計から作り直さなきゃいけないんですよ。それが答えなのかもしれないなって」

愛情の話ではない。

「ないですね。もっと事務的な感じです。ただ、あのときの安心っていう答えより、今の方がしっくり来てます」

窓の外を郵便配達のバイクが通り過ぎて、彼女はそれを一瞬目で追ってから、話を戻すように水を一口飲んだ。

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