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母子家庭の結婚はやめとけという言葉は、まったく違う話

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シングルマザーとの再婚を考えていて、本当にやめるべきか迷っている人。母子家庭で育って、自分は結婚に向かないのかと不安な人。あるいは、やめとけと言われる側に立たされている、シングルマザー本人。この言葉が厄介なのは、まるで違う二つの話を、ひとつの乱暴なひと言にまとめてしまっているところです。今回、その二つの現実を別々に生きた人たちに、話を聞きました。

最初に会ったナミさんは、35歳の女性です。母子家庭で育った、その一点だけで、人生の大事な場面を傷つけられた経験を持っていました。カフェで向き合うと、彼女は少し硬い表情で話し始めました。

私が母子家庭育ちだって言うと、やめとけって言われる側の気持ち、わかりますか。あれ、本当にきついんですよ。

目次

片親で育ったからと言われた人

彼の親に、家柄が違うと反対された

ナミさんが結婚を意識した相手は、彼女を深く愛してくれていたといいます。問題は、彼ではなく、彼の親でした。

結婚の挨拶に行ったとき、彼のご両親に、はっきり言われたんです。母子家庭だと価値観が合わないんじゃないか、家柄が違う、って。目の前で。彼はかばってくれましたが、親の反対が強くて、結局その結婚話は白紙になりました。

その言葉は、何年経っても消えないといいます。

片親で育ったから、結婚に向いてない。そう言われたように感じて。自分の何が悪いわけでもないのに、生まれ育った環境っていう、自分では選べなかったものを理由に、人としてだめだって烙印を押された気がして。あれから、自己肯定感がガクッと下がりました。別の人と結婚しましたけど、相手の家族と関わるのが、今でも怖いんです。

育ちへの否定は、本人に責任のないことへの差別

ナミさんが受けたものを、私ははっきり、偏見だと思います。

母子家庭で育ったこと。それは、彼女が選んだことではありません。本人にはどうしようもなかった環境です。その育ちを理由に、価値観が、家柄が、と結婚を拒むのは、その人自身の人柄も、努力も、何ひとつ見ていない。ただ、片親という属性に、根拠のないイメージを貼りつけているだけです。

母子家庭で育った人が、結婚生活に向かないという事実は、どこにもありません。むしろ、苦労を見て育った分、家族を大切にする人もたくさんいる。育ちへのやめとけは、差別以外の何物でもなく、これに屈する必要はまったくない。ここははっきりさせておきたいと思います。

「そう言ってもらえると、少し救われます」ナミさんは、ふっと息をつきました。「ずっと、自分のほうに欠陥があるんだって、思い込まされてたので」

でも、子どものいる人との再婚には、現実の難しさがある

パパじゃない、と毎日言われた夜

ただ、やめとけという言葉が指すもう一つの現実は、偏見とは少し性質が違います。子どものいる人との再婚には、出身とは無関係の、構造的な難しさがある。次に会った30代の会社員リョウさんは、それに正面からぶつかって、破れた人でした。

妻は職場で知り合ったシングルマザーで、五歳の娘がいました。子どもがいても大丈夫、家族になれる、って自分に言い聞かせて結婚したんです。

でも、同居が始まると、現実は厳しかったといいます。

娘さんは私を、ママの彼氏、って呼ぶんです。パパじゃない、って毎日言われて。朝ごはんを一緒に食べようとしても、ママと二人がいい、って拒否される。ある日、その子が、この人いつ帰るの、って平気で言ったのを聞いて、胸が締めつけられました。

自分が、家族の一員じゃないと感じた

つらかったのは、子どもの態度だけではありませんでした。

夜は妻が娘さんと一緒に寝て、私はソファで過ごす夜が続きました。妻に相談しても、子どもが一番だから理解して、って返されて。だんだん、自分はこの家の家族じゃない、ただの同居人なんじゃないかって、孤独でたまらなくなって。

経済的な負担も重かったといいます。元夫からの養育費はほとんど入らず、塾代も習い事も医療費も、気づけば全部自分が背負っていた。意見を言えば、冷たい、と責められる。

結局、結婚から二年で離婚しました。今でも思います。子どものいる家庭に入るなら、もっと覚悟と準備が必要だった、って。やめとけって声が出るのも、わかるんです。

このリョウさんの体験は、偏見ではありません。やめとけという言葉は、ナミさんを刺した偏見と、リョウさんが直面したこの現実を、同じひと言にぐちゃぐちゃに混ぜている。だから、まずこの二つを切り分けないと、議論が始まらないんです。

失敗の本当の原因は、子どもじゃなくて夫婦だった

子が懐かないことではなく、夫婦が分裂したこと

では、リョウさんのような再婚の失敗は、何が原因だったのか。連れ子が懐かなかったからでしょうか。私は、そこに見落としがあると思います。

子どもが、新しい親をすぐに受け入れないのは、むしろ自然なことです。子には子の事情がある。本当の親と離れた喪失や、新しい人を好きになったら元の親を裏切る気がする、という板挟み。だから、パパじゃない、と言うのは、その子なりの精一杯の抵抗で、悪意ではありません。

問題は、子が懐かないこと自体ではなく、その過程で、夫婦が分裂してしまうことなんです。子ども対新しい親、という対立の構図ができて、妻は子の側につき、夫は一人ぼっちになる。リョウさんが本当に失ったのは、娘さんの懐きではなく、妻という味方でした。

夫婦が同盟でいられたら、子との関係は後から育つ

それを裏づける話を、三人目のマサさんから聞きました。37歳。同じシングルマザーとの結婚で、リョウさんとよく似た入り口に立ちながら、まったく違う場所にたどり着いた人です。

「うちも最初は、六歳の娘に、パパじゃない、ってはっきり言われました。避けられて。リョウさんの話、痛いほどわかります」

何が分かれ目だったのか。

「夫婦で、何度も何度も話し合ったことだと思います。妻も最初は、子どもが優先で当然っていう態度が強かった。でも、それだと俺が孤立して家庭が壊れる、二人がチームじゃないと子どもも安心できない、って粘り強く話して。子どものペースを待つことと、夫婦が一枚岩でいることを、二人で決めたんです」

そこから、時間をかけて関係が育ったといいます。

「一緒に遊んだり、小さな約束を守ったりを、ひたすら繰り返して。一年くらいかけて、少しずつ心を開いてくれて、今ではパパって呼んでくれます。簡単な道じゃなかった。でも、急いで家族になろうとするのをやめて、まず夫婦でいることを守ったのが、よかったんだと思います」

再婚で守るべきなのは、早く家族になることではなく、まず夫婦が一つのチームでいられること。子どもとの絆は、その同盟の上に、後から時間をかけて育つ。血のつながりの代わりを焦って手に入れようとするほど、関係は壊れていく。マサさんとリョウさんの違いは、たぶんそこにありました。

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