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好き避けする女性がされて嬉しかったことは、驚くほど地味な行動だった

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避けているのに、放っておかれると寂しい。近づかれすぎると逃げる。この矛盾を抱えた側が、実際に何をされて嬉しかったのか。好き避けする女性がされて嬉しいこと全員が挙げたのは、告白でもサプライズでもなく、たった一言か、一つの態度だった。

目次

派手な優しさは、逆効果になる

普通のトーンで言われた一言

三十一歳のアカリさんは、職場の男性に対して冷たい態度を取り続けていた。

「自分から話しかける勇気がなくて。すれ違うと目を逸らすばっかりで」

相手にはどう見えていたと思いますか。

「嫌われてると思ってたはずです。私、返事も短かったので」

そこで何がありました。

「彼が仕事の資料を渡すときに、最近忙しそうだけど無理しないでね、って」

それだけですか。

「それだけです。しかも、大げさな感じじゃなくて、普通のトーンで言われて」

そのときの気持ちは。

「胸の中が熱くなりました。避けてるのに、ちゃんと見てくれてるんだって」

なぜそれが効いたと思いますか。

「特別扱いじゃなかったからです。もし、心配だから話したかったんだ、みたいな感じで言われてたら、たぶん逃げてました」

その後は。

「少しずつ、自分から返事ができるようになりました」

詰められると、扉が閉まる

八人全員が、同じ地雷を挙げた。理由を問い詰められることだ。

二十七歳のミオさんは、大学のサークルでの話をしてくれた。

「会うたびに緊張して、そっけない態度を取っちゃうんです。誘われても、予定あるかも、って曖昧に返して」

相手はどうしましたか。

「一度、無理しなくていいよ、気が向いたらまた誘うね、って言われて」

引き下がった。

「引き下がってくれました。理由も聞かれなかったです」

そこが良かった。

「良かったです。詰められてたら、たぶん完全に逃げてました。なんで来ないの、って聞かれたら答えられないので」

答えられない理由は。

「自分でもわからないからです。行きたいのに行けないって、説明できないでしょ」

次の誘いは。

「乗りました。少し勇気を出して」

好き避けをしている本人は、自分の行動の理由を言語化できていない。だから理由を尋ねる質問は、答えられない問いになる。答えられない問いを向けられると、関係そのものから離れる方が楽になる。

特別扱いされすぎず、無視もされない

二十九歳のサキさんが挙げたのは、グループの中での出来事だった。

「彼が、みんなで話してる中で、さりげなく私の意見を拾ってくれたんです」

どんな形で。

「その件どう思う? って、名前を呼んで振ってくれて」

それだけですか。

「それだけです。ただ、他の人と同じように扱いつつ、ちゃんと私を意識してくれてる感じがあって」

その塩梅が。

「重要でした。特別扱いされすぎると逆に逃げるんですよ。周りにバレるのが怖いので」

無視されるのも。

「嫌です。矛盾してますけど」

彼女はそこで笑った。

「面倒くさいですよね。自分でもそう思います。ただ、あの振り方は本当にちょうど良くて」

三十三歳のナナミさんの話も、同じ場所を指していた。

「グループだと普通に話せるのに、彼の前だけ急に無口になるんです」

相手はどう反応しました。

「今日も静かだね、って笑って。それだけです」

責められなかった。

「責められなかったです。無理に話させようともしなかった」

その反応をどう受け取りましたか。

「沈黙を共有してくれる感じがして、かえって嬉しかったです。押しつけてこない優しさというか」

黙っていることを許容されると。

「壁が少しずつ溶けます。あれが一番効きました」

返信できない期間を、責められない

三十歳のユカさんが挙げたのは、連絡についてだ。

「好きな人からメッセージが来ると、すぐ既読をつけちゃうんです」

なのに返信できない。

「できないです。何を書けばいいかわからなくて、結局時間がかかる」

どのくらい。

「長いときは丸一日です。既読は一分でついてるのに」

相手からしたら。

「無視されてると思われても仕方ないですよね」

何がありましたか。

「向こうが先に、急がなくて大丈夫だよって言ってくれたんです」

先に。

「先にです。私が謝る前に。あれ、すごくありがたくて」

何が良かったんですか。

「プレッシャーが消えたことです。既読をつけた瞬間から、早く返さなきゃって焦るんですよ。あの焦りが、余計に返信を遅くする」

その後は。

「自分のペースで返せるようになって、そこから距離が縮まりました」

好き避けをしている側は、既読をつけた時点で自分に締め切りを課している。その締め切りが自分で作ったものだと外からは見えない。急がなくていいという一言は、その締め切りを解除する効果を持っていた。

行動を見てもらえたとき

二十八歳のリナさんは、少し違う形の話をした。

「私、好きな人が困ってると、つい世話を焼いちゃうタイプなんです」

近づいているように見えますね。

「見えると思います。ただ、自分から甘えることは絶対にできなくて」

一方通行ですね。

「一方通行です。やってあげるのは平気なのに、やってもらうのが無理で」

何がありましたか。

「彼が、いつもありがとう、助かってるって、ちゃんと言葉にしてくれて」

それは大きかった。

「大きかったです。小さい気遣いをちゃんと見てくれてるんだって」

なぜそこまで効いたんですか。

「避けてるつもりでも、行動には出ちゃってるんですよね。それを受け取ってもらえると、あ、伝わってるんだって安心して」

彼女はそこで少し照れた。

「言葉で伝えられない分、行動でしか出せないので。それを拾ってもらえるのは、たぶん一番嬉しいです」

恋愛を急がなかった人

三十五歳のケイコさんは、当時のことを、いちばん落ち着いた口調で話した。

「その人は、恋愛を急がなかったんです」

具体的には。

「普通に話して、普通に笑って。それだけです」

何もしなかった。

「何もしなかったというか、私の状態を問題として扱わなかったんですよ」

問題として扱わない。

「なんで避けるの、とか聞かれなかったです。避けてる私を、そのまま普通に扱ってくれた」

その距離感が。

「一番安心できました。時間が経つにつれて、この人となら、もう少し近づいてもいいかもって思えるようになって」

どのくらいかかりましたか。

「半年以上です。向こうからしたら、たぶん長かったと思います」

三十二歳のトモコさんも、似た話をした。彼女が挙げたのは、体調を崩したときの一言だ。

「無理しないでね、って言われただけです」

それだけ。

「それだけです。あと、忙しくしてるときに、手伝おうか? って自然に声をかけてくれたことも」

派手なことは何も。

「何もないです。日常の中の、さりげない優しさで」

なぜそれが刺さるんですか。

「自分から近づけない分、相手からの穏やかな一歩が、安心材料になるんだと思います。大きい一歩だと、こっちが後ずさりするので」

八人が挙げたものに、共通していたこと

証言を並べてみると、嬉しかった行動には共通の性質があった。

どれも、返事を必要としない。

無理しないでね、という言葉に、返事はいらない。急がなくて大丈夫だよ、も同じだ。グループで意見を振るのは、答えても答えなくてもいい形になっている。沈黙を許容するのも、感謝を伝えるのも、受け取る側が反応を返さずに済む。

好き避けをしている側が困るのは、その場で反応を返さなければならない場面だ。心拍が上がっている状態では、自然な反応が出せない。出せないから避ける。

だから、反応を求めない形で届く言葉だけが、壁の内側に入る。

アカリさんに最後に聞いた。あのとき、彼はわかっていたと思いますか。

「わかってなかったと思います」

そうですか。

「後で聞いたら、ただ疲れてそうだったから言っただけって。深い意味はなかったみたいで」

拍子抜けしませんか。

「しました。少し。ただ、たぶんそれが良かったんですよね。狙ってやってたら、私は気づいて逃げてたので」

今はその方と。

「結婚しました。三年前に」

彼女はそう言ってから、少し困ったように笑った。

「未だに言ってないんですよ。あの一言で全部変わったってことは。言ったら、あの人ぽかんとすると思うので」

窓の外を子どもを乗せた自転車が通っていって、彼女はそれを目で追ってから、話を切り上げるように鞄を引き寄せた。

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この記事を書いた人

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