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異動で好きな人と離れる男性心理。最後の一週間にやっていたこと

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辞令が出た日から、残りの日数を数え始める。それなのに、態度が近づくどころか遠ざかる人がいる。異動で好きな人と離れる七人に聞いた。全員が、最後の数週間で普段と違う行動を取っていた。しかも、その方向は真っ二つに割れた。

聞き取りをしていて気づいたことがある。この話をする人は、辞令が出た日付を全員覚えている。何年前のことでも即答する。

目次

辞令が出た瞬間に、日数を数え始める

頭が真っ白になった

三十六歳のカズヤさんは、自分ではなく相手が異動する側だった。

「発表があったのは金曜の朝礼です。四年前の十月十七日」

聞いた瞬間は。

「真っ白でした。仕事だから仕方ないって、その場で自分に言い聞かせたのは覚えてます」

そこから何を考えました。

「あと何日一緒にいられるか、です。すぐ計算しました。営業日で二十三日でした」

数えた。

「数えました。毎日減っていくのを見てました」

伝えようとは。

「迷いました。二十三日間ずっと迷ってました」

最終日には。

「頑張れよ、としか言えなかったです」

それだけですか。

「それだけです。三年一緒に働いてた人に、頑張れよ」

彼は少し言葉を止めた。

「後から情けなくなりました。何のために二十三日間迷ってたんだって」

平気なふりをしていた側

三十三歳のリョウさんの場合は、動揺を隠すことに全力を使っていた。

「同僚の異動が発表された日、俺は完全に平気なふりをしてました」

内心は。

「かなり動揺してました。今まで何気なくしてた雑談とか、休憩中の短い会話が、もう当たり前じゃなくなるんだなって」

そのあと、どう行動しましたか。

「最後の一週間、わざと距離を置きました」

近づくのではなく。

「逆です。話しかける回数を減らして、休憩の時間もずらして」

なぜですか。

「近づくと余計に寂しくなるのがわかってたからです」

相手は気づきましたか。

「気づいてました。何かあった? って聞かれて」

なんと答えました。

「大丈夫、としか」

本当は。

「行かないでほしいと思ってました。それだけです」

行動は、二つの方向に割れた

七人の証言を並べると、最後の数週間の行動が、はっきり二種類に分かれていた。

離れる側と、近づく側だ。

三十一歳のショウさんは、後者だった。

「異動が決まってから、急に優しくなってしまった自分がいて」

具体的には。

「今まで普通に接してたのに、必要以上に気を遣ったり、仕事を手伝ったり。頼まれてもいないのに」

回数は。

「毎日です。最後の三週間、ほぼ毎日何かしてました」

相手の反応は。

「不思議そうな顔をしてました。今でも覚えてます。急にどうしたの、みたいな」

説明しましたか。

「してないです。何も言わずに手伝うだけで」

何だったと思いますか。

「離れたくないっていう気持ちが、そのまま行動に出てただけです。言葉にするのが怖かったので」

なぜ怖かったんですか。

「仕事と恋愛を混ぜたくないっていう建前はありました。ただ、あれは建前ですね。結局は自分の弱さです」

離れる側と近づく側は、正反対に見えて、同じ処理をしている。どちらも、気持ちを言葉にしない前提で、余った感情を行動に流している。片方は接触を減らすことで痛みを予防し、もう片方は接触を増やすことで残り時間を使い切ろうとする。

受け取る側からすると、どちらも説明のつかない急変として届く。

気持ちを認めたのが、最終日だった人

二十九歳のユウキさんは、自分が異動する側だった。

「新しい場所で頑張らなきゃいけないのに、頭の中は彼女のことでいっぱいで」

準備は手につきませんでしたか。

「引き継ぎ資料、二回作り直しました。集中できてなくて」

最終日はどうでしたか。

「彼女が、また会えるよねって笑って手を振ってくれて」

そのとき。

「その笑顔を見て、ようやく、あ、俺この人が好きだったんだって認めました」

そこで初めて。

「そこで初めてです。それまでは、仲がいい同僚だと思い込もうとしてました」

何かしましたか。

「何も。連絡先も聞けなかったです。ただ見送るしかなくて」

異動先では。

「思い出すたびに後悔してました。あのとき伝えればよかったって」

彼はそこで、短く息をついた。

「認めるのが遅すぎたんですよね。認めた時点で、もう時間がなかったので」

三十四歳のケンタさんの話も、近い。

「異動前の最後の飲み会で、好きな人が隣に座ってくれたんです。普段はそんなことなかったのに」

意図があったと思いますか。

「わからないです。今もわからない」

何か言おうとしましたか。

「少し酔った勢いで、寂しくなるな、って言いかけて、飲み込みました」

飲み込んだ。

「舌の先まで来てたんですけど。あそこで言ってたら、何か変わってたかもしれないですね」

相手は何と。

「また遊ぼうね、って笑顔で言ってくれました。それが社交辞令なのか本当なのか、わからなくて」

翌日は。

「普通に仕事をして、普通に見送って、普通に別れました。全部、普通です」

今は。

「もっと素直になればよかったと思ってます。ただ、あのときの自分には無理だったので」

離れた後に、気持ちが薄れた人

三十七歳のマサキさんの証言は、他とは違う方向を向いていた。

「彼女の異動が決まったとき、最初は遠距離でも続けられると思ってたんです」

関係はあったんですか。

「付き合ってはいないです。ただ、かなり近い関係で。連絡は毎日取ってました」

離れてみて。

「気持ちが急速に冷めていったんですよ。自分でも驚くくらい」

何が起きたんですか。

「日常の接点がなくなっただけなんですけど。すれ違うとか、同じ会議に出るとか、そういうのが全部なくなって」

連絡は。

「取ろうとはしました。ただ、忙しさを理由に先延ばしにして。最初は毎日だったのが、週に二回、そのうち月に一回になって」

会いたくなかったんですか。

「会いたかったです。本当に。ただ、新しい環境に適応するので精一杯で、感情を後回しにしてしまって」

後悔していますか。

「してます。あのときもっと積極的に動けばよかったって」

彼はそこで、少し苦い顔をした。

「気持ちって、環境で維持されてる部分があるんですよね。会う機会がなくなると、思ってた以上に減っていく。あれは自分でも意外でした」

三十二歳のトオルさんは、自分から関係を切った側だ。

「彼女が地方に異動になると知ったときに、自分の中で、これで終わりだって線を引いてしまって」

なぜですか。

「遠距離を維持する自信がなかったです。あと、彼女に負担をかけたくないっていうのもあって」

最後の日は。

「連絡してね、って言ってくれたんです。向こうから」

連絡しましたか。

「してないです。一度も自分からは」

気持ちはあったのに。

「ありました。あったのに、離れることで終わらせました」

今はどう思っていますか。

「逃げただけだったなって。負担をかけたくないっていうのは、綺麗な言い方をしただけで、実際は自分が傷つきたくなかっただけです」

いつ気づきましたか。

「半年後くらいです。共通の友人から、彼女が向こうで元気にやってるって聞いて。あ、俺が勝手に終わらせただけだったんだって」

距離ができてから、大きさを知る

七人のうち、異動をきっかけに関係が進んだ人はいなかった。

全員が、伝えないまま離れている。そして全員が、離れてから自分の気持ちの大きさを把握している。

理由はたぶん単純だ。毎日会える状態では、気持ちの総量を測る必要がない。測らなくても明日また会える。会えなくなって初めて、その存在が占めていた面積が見える。

ただし、そのときにはもう手段が消えている。

カズヤさんに最後に聞いた。今からでも連絡は取れますか。

「取れます。社内なので、名前を検索すれば出ます」

しないんですか。

「しないです。四年経ってるので」

一度も。

「一回だけ、共通の仕事で電話したことがあります。二年前に」

そのときは。

「業務の話だけです。三分くらいで終わりました」

何か言おうとは。

「思わなかったですね。あの三分の間、完全に仕事の顔でした。向こうも」

彼はそこで、少し笑った。

「あのとき何も感じなかったんですよ。それが答えなんだと思います。ただ、あの二十三日間だけは、いまだにはっきり覚えてるので」

矛盾していますね。

「してます。今も説明できないです」

外は昼過ぎの明るさで、ビルの間から工事の音が断続的に聞こえていた。彼は時計を見て、午後の会議があるので、と言って立ち上がった。

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