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温泉旅行と生理がかぶった。彼氏への伝え方とタイミングで、私が本当に怖かったこと

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アプリの予測がずれて、旅行の三日前に気づいた。あ、かぶる。その瞬間、足元からすっと冷えていくような感覚があった。温泉に入れるかどうかは、正直どうでもよかった。頭を占めていたのは一つだけ。彼に、いつ、なんて言えばいいんだろう。それだけで、その夜はほとんど眠れなかった。

半年付き合った相手との、初めての一泊旅行だった。二週間前から彼が宿のサイトを何度も送ってきて、露天風呂付きの部屋にするかで迷って、結局ちょっと高いほうを予約した。その嬉しそうなやりとりを思い出すほど、言い出しにくくなっていく。荷造りの途中でスマホを開いて、下書きを打っては消し、打っては消し。生理来ちゃった、の一行が、どうしても送れなかった。

引かれたらどうしよう。せっかくの旅行を、私のせいで台無しにしたと思われたらどうしよう。そんなことをぐるぐる考えて、気づいたら深夜二時だった。

目次

温泉旅行に生理が重なって本当に怖いのは、入れないことじゃない

このとき自分が怖がっていたものの正体を、あとになって考えてみた。温泉に入れないのは、まあ困る。でも入れないだけなら、部屋でゆっくりすればいい話だ。私が本当に怖かったのは、彼のがっかりした顔だった。

温泉旅行の裏にある、口に出しにくい期待

温泉旅行って、ただ湯に浸かって帰るだけの旅じゃない、という空気が、どうしてもある。特に付き合いたてだと、この旅行で距離が縮まる、という予感みたいなものを、お互いどこかで抱えている。夜、同じ部屋で過ごすことへの、言葉にしない期待。生理は、その期待に真正面からぶつかってくる。

だから入浴が難しい、と伝えるとき、私が本当に伝えていたのは、お風呂の話だけじゃなかった。それを自分でも分かっていたから、よけいに言いにくかったんだと思う。伝え方に悩む人が多いのは、たぶん湯船の問題じゃない。言葉にしていない、この裏側の部分があるからだ。

がっかりされるという言葉の中身を分解してみる

がっかりされるのが怖い、と一言で言うけれど、ほどいていくと、中身は二つに分かれる。一つは、楽しみにしていた予定が変わることへの、彼自身の素朴な残念さ。これは人間だから、多少はある。もう一つは、私が勝手に足している分だ。彼はそこまで気にしていないのに、がっかりされるに違いないと先回りして、彼のがっかり顔を、頭の中で高解像度に描いてしまう分。

あとで分かったのは、私が眠れないほど怖がっていた顔の、かなりの部分が、この後者だったということ。実際の彼より、想像の中の彼のほうが、ずっと冷たかった。

伝えるタイミングに正解の日数はない。決めるのは関係の距離

伝え方を調べると、旅行の一週間前がベスト、みたいな言い切りをよく見かける。でも実際は、そんなにきれいには決まらない。付き合ってどれくらいか、どんな距離感か。それによって、言いやすいタイミングはまるで違う。私の周りの何人かの話を並べてみると、それがよく分かる。

付き合いたてなら、直前より少し前がいい

私の場合は、結局、出発前夜に送った。生理が来ちゃって、温泉入るの難しいかも、と。震える指で送信して、既読がつくまでの一分が、異様に長かった。返ってきたのは、大丈夫だよ、ゆっくりしよう、旅行自体が楽しみだから、という短い一言。拍子抜けするくらい、あっさりしていた。

ただ、今振り返ると、もう少し早く言えばよかったとも思う。付き合いたては、お互いまだ手探りだ。相手だって、生理のときにどう振る舞えばいいのか分かっていない。前夜だと、彼に考える時間がない。直前すぎると、優しくしたくても段取りが間に合わない。二、三日前に、さらっと共有しておくくらいが、ちょうどよかったんだろう。

長い関係ほど、当日の一言でいい

一方で、結婚八年目の友人は、まったく違うことを言っていた。彼女は毎年恒例の温泉旅行に生理がかぶっても、当日の朝、支度をしながら、今日来ちゃった、お風呂は控えめにするね、でおしまいらしい。もう空気みたいなものだから、と笑っていた。夫のほうも、じゃあマッサージ予約しとくか、くらいの反応だという。

長く一緒にいると、生理は事件じゃなくなる。わざわざタイミングを計る対象ですらなくなって、天気の話と同じ列に並ぶ。ここまで来ると、伝え方に悩むこと自体が消える。裏を返せば、悩みが消えるまでに、何年もかけて積み上げた当たり前がある、ということでもある。

遠距離なら、事前共有が旅行そのものを守る

もう一人、遠距離の恋愛をしている後輩は、また別の答えを持っていた。彼女は久しぶりに会う旅行で生理とかぶりそうだと分かった時点、つまり一週間ほど前に、先に伝えたという。入浴は無理かも、温泉以外のプランも一緒に考えよう、と。

遠距離は、会える回数が少ないぶん、一回の旅行にかかる重みが違う。だからこそ、当日いきなり空気を変えるより、前もって二人で予定を組み替えられる余白を作っておいたほうがいい。彼女は、事前に言ったことで、むしろ旅行の満足度が上がったと話していた。温泉街を歩いて、地元の店でだらだら長くごはんを食べて、それはそれで濃い時間になったらしい。

私がいちばん後悔している、察してほしいという伝え方

ここまで書いておいてなんだけど、私が最初にやろうとしたのは、言わずに分からせる、だった。はっきり口に出すのが恥ずかしくて、なんとか彼のほうから察してくれないか、と期待した。今思うと、これが一番よくなかった。

言葉にせず、空気で伝えようとした結果

具体的には、宿に着いてから、大浴場はあとで一人でゆっくり入ってくるね、と妙によそよそしい言い方をした。一緒に入る流れを、それとなく避けたつもりだった。でも彼には何も伝わらず、じゃあ俺も別で入ってくるわ、で終わった。伝わらないまま、私だけが気まずさを抱えて、夕食のあいだもずっと上の空だった。

結局その夜、耐えきれなくなって、ちゃんと言った。ごめん、実は生理で、と。言ってしまえば一瞬だった。彼は、なんだそういうことか、先に言ってよ、と少し笑っただけ。察してほしいは、優しさに見えて、相手に謎解きを押しつけている。あのとき骨身にしみたのはそれだった。ひとこと言うほうが、よっぽど親切なのだ。

彼の反応に、その人との相性が透けて見える

生理を伝えるという場面は、地味だけど、相手を測るのにかなり使える。楽しみにしていた予定が、こちらの都合で崩れる。しかも、あまりロマンチックではない理由で。そういうときに相手がどう出るかは、機嫌のいいときの優しさなんかより、ずっと正直だ。

気にしないで、という言葉に出るもの

同じ気にしないででも、中身はくっきり分かれる。心から体調を気遣って、じゃあ何なら楽しめるかな、と一緒に考えようとする人。片方で、口では気にしないでと言いながら、あからさまにテンションが落ちて、その落差でこちらに罪悪感を持たせる人。前者なら、この先しんどいことがあっても一緒にやっていけそうだと思える。後者なら、少し立ち止まって考えたほうがいい。

生理の伝え方に悩むとき、人はたぶん無意識に、不都合な私も受け止めてくれるのか、を確かめている。温泉旅行と生理がかぶる、というただの偶然が、その小さな試験紙になっている。

温泉に入れなくても、いい旅行にした人たちがやっていたこと

現実的な話もしておく。生理でも、湯船に入れる方法がないわけじゃない。貸切風呂や部屋付きの露天なら、人の目を気にせず、短時間だけ、という選び方もできる。無理は禁物だし、量が多い日はやめておくのが無難だけど、後半で落ち着いてきたら、体調を見ながら判断すればいい。ここは自分の体と相談する範囲だ。

お風呂以外に、二人でできること

そもそも、温泉旅行の中身は湯船だけじゃない。私の友人たちが口を揃えて言うのは、入れないと分かってからのほうが、かえって二人の時間が濃くなった、ということだった。温泉街をあてもなく歩く。部屋でだらだら喋る。地のものを、時間をかけて味わう。岩盤浴やマッサージのように、湯船じゃない方法で体を温める。

湯に浸かれない一泊を、それでもいい旅行にできるかどうかは、結局、その場で二人がどれだけ機嫌よくいられるかにかかっている。お風呂は旅行の主役に見えて、案外そうでもない。

私はいまでも、旅行の予定に生理がかぶりそうだと分かると、少しだけ身構える。何年経っても、伝える前の一瞬は、やっぱり緊張する。慣れて平気になった、とは言えない。ただ、あの深夜二時にひとりで下書きを消していた頃とは、少しだけ違う。怖さが消えたわけじゃなくて、その怖さごと相手に渡してしまえるようになった、というだけだ。たぶん、それで十分なんだと思う。きれいに割り切れないまま、私はまた、次の旅行の日程をアプリと見比べている。

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